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2010
01.14

「空を飛びたいと思わなくなったのはいつからだろう」

むかしはいつも夢見ていた気がするのだけれど。



「何してんの」

 呆れたような声がかけられてから程なくして、左側に軽い圧迫感を覚える。
 何をされたわけでもないけど、そこに人がいるという、ただそれだけで。


「ねぇ、何してんの」

 焦れたように繰り返される音に興味はなくて。
 やがてその目が彷徨って外されるのを、何もせずにただ待っている。


 それがいつものことで。



 だけど、空があまりに青くて。

 雲もない、

 あまりに薄っぺらな青だったから。



「そら、とびたいっておもうか」


 
 つい、口からぽろっと落としてしまった。




 落としてしまってから、

(…やばいな、拾わなきゃ)

 って、ちょっとは思ったんだけど。

 ついさっき落としたはずのそれは、地面を見下ろしても、もう転がってなくて。

 もしかしたらそいつが喰っちまったんじゃないかと思いもした。
(コイツはそういうやつなんだ! ぶつけられた、おちてた、そういうかけらを全部飲み込んで、噛み砕く!)





「 や だ ね 」




 だから、喰い慣れなかったものに苦労した、みたいな顔したそいつを見ても、別に驚きゃしなかった。

 ただ、その答えがちょっと意外だっただけで。


 コイツは、おっかなそうに見える外見に反して中身は子供だから。

 世界中が自分に注目してほしい、って本気で思ってるようなヤツだから。

 空を飛ぶなんてばかげた話(夢みたいな話)、目を輝かせるかと思ったのに。



「どうせなら雲があるときがいいって。だって今何もないじゃん。つまんねー」


 本気なのか、冗談なのか。

 どっちでもいいか、と思って少し笑えた。

 口挟みたいことはいろいろあったけど、別にいいや。


 急に笑い出した俺を不可解そうにそいつは見てたけど、俺の笑いは止まらなかった。





 ただ、どうせ飛ぶならこいつと一緒がいいかな、なんて俺が思ってたこと。

 それだけ秘密にできるなら、他人にどう見られたってかまわないんだ。



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